2000/4/28
 「生分解性プラスチック」特集
 

用途広がる生分解性プラスチック
 世界的に環境負荷低減への視線が集中する中で、生分解性プラスチックに対する関心も非常に高くなっている。このプラスチックには、微生物系、化学合成系、天然物系の3系統があるが、一般のプラスチックとの大きな違いは、廃棄後に土中の微生物により二酸化炭素および水に分解される。最大の課題はコスト面にあったが、量産傾向とともに普及条件となる低価格化への移行期に入ってきた。環境に優しい「グリーンプラ」の愛称も社会に広く浸透しつつある。

「環境中での非蓄積性」が特色
 プラスチックの廃棄がもたらす地球環境への負荷として、環境中での蓄積などの課題が発生してくる。生分解性プラスチックの研究開発は80年代後半に本格化し、90年代には国内外での地球環境保護に対する認識の高まりとともにその認知度を高めてきた。その開発テーマは「使用中は従来の機能を保ちながら、使用後は自然界に存在する微生物の働きによって低分子化合物に分解され、最終的には水や炭酸ガスなどの無機物に分解される高分子素材」であった(生分解性プラスチック実用化検討委員会「新プラスチック時代の幕開け」1995年)。
 「環境中での非蓄積性」が最大の特色だ。現在、素材製品としての生分解性プラスチックは多数のメーカーにより供給されている。物性的には、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)などの領域をカバーする製品展開が見られ、最終製品に使われるケースも目立つようになっている。生分解性プラスチックは社会的に進展している再使用、もしくはリサイクルになじまない用途分野をカバーするケースを想定して使用される。回収など費用的な面で困難な最終製品にも採用されている。市場環境は需給という視点から見れば、消費者レベルで浸透してきた環境保全への理解と製品ニーズ、企業側による環境負荷低減製品という商品開発姿勢というスタンスがもたらす相乗効果が観察できるようになっている。

量産化でコスト低下傾向に
 生分解性プラスチックの主要用途は広範な産業、消費者に密着した分野が中心である。このプラスチックは既存のものと同様にペレットとして供給され、ボトルなどさまざまな成型品として加工される。二次加工素材となるフィルム、シート形態での製品化もさかんだ。
 社会が要求する製品需要は、プラスチックに限らず新規の組成によるさまざまな工業素材を誕生させてきた。生分解性プラスチックは環境対応がもたらした新素材であるが、小ロットによるコスト面に課題を抱えてきた。
 しかし、ここ数年で樹脂素材メーカーにより優れた製品(原料素材)が開発され、採用実績が累積されてきたこと、徐々にではあるが確実に応用分野を拡大していることなどから量産化によるコスト低下に向かいはじめている。既に化学企業2社による大規模増産構想も公表されている。

環境保全関連の需要拡大にも期待──生分解性プラスチック
農業、土木用資材として活躍
 90年代初頭、100トン弱でスタートした日本の生分解性プラスチック市場は98年1500〜2000トン、99年2500トン超(いずれも推定値)と拡大基調にあり、21世紀初頭にかけての飛躍を予測させるような市場の立ち上がりが観察される。現在、市場はコンポストバッグ、マルチフィルム、育苗用ポット、土のうなど農林土木用素材を主体とする分野がけん引している。
 例えば農業用資材として多用されるマルチフィルムは、栽培期を過ぎた休耕期間に土壌中で二酸化炭素と水に完全分解する。このことは環境に優しいという生分解性プラスチックの特性以外のメリットとして、後処理を不要にするという機能をも認知させるようになったという。マルチフィルムは、雑草の発生抑制、土壌水分・地温の確保を目的とする資材だが、農作業時の使用後回収にともなう労働を不要とし、その経費もかからなくなる。このため、ポリエチレン製フィルムからの置換が急速に進展している。

包装用や繊維製品にも適用
 包装用、工業用フィルムへの利用も拡大が見込まれている。生分解という資源循環への適合性に加え、高い機能性を発揮した製品も登場し始めた。従来のOPP(延伸ポリプロピレンフィルム)やO-PET(延伸ポリエステルフィルム)が使われている大部分の用途に使用でき、紙とのラミネートや粘着加工などの分野でも活躍しそうである。
 繊維製品への適用も進みはじめた。PLA(ポリ乳酸)繊維がそれだ。この繊維は光沢性があり、風合いには絹の感触があるという。PLAはガラス転移点がセ氏60度と低いのでアイロン掛けを必要とする衣服には必ずしも最適とはいえないが、それ以外の適用分野での利用が期待されている。衣服機能を優先する素材ではあるが、この素材のもつ生分解性プラスチックとしての機能性が高く評価されている。こうした大量需要の可能性をもつ繊維素材の登場は、このプラスチックの近未来での市場拡大を暗示させる。

コンポスト化、緑地還元も有望
 ヨーロッパの環境先進国で普及している生ごみのコンポスト化も日本での生分解性プラスチック市場の重要な位置を占めるものと予想されている。また、容器包装リサイクル法との関連で、バイオリサイクルへの組み込みによる市場拡大も構想されている。生分解性プラスチック製コンポストバッグによるごみの分別排出・収集、コンポスト化、緑地還元事業に取り組む自治体の例も見られるなど、環境保全との関連での需要拡大は今後本格化するであろうことは確実な情勢となっている。
 環境負荷低減に大きく寄与する生分解性プラスチックは、量産化の可能性を背景に急速な普及のためのテークオフ態勢にあるといえる。このことはプラスチック関連業界による製品への積極的な採用意欲、最終消費者の認知度を高める時期にあることを意味する。
 業界団体の「生分解性プラスチック研究会」(大手化学企業など会員社数50社)ではゼロエミッション社会にふさわしい素材の機能を正しく理解してもらい、新しいプラスチックエージを担う素材としてのアピールのために品質基準をクリアした製品に対して統一マークを付けて認定する方針を打ち出した。生分解性プラスチックの愛称「グリーンプラ」と、そのマークをあしらったラベルは4月から登場する。

<各社紹介>
◆発泡スチロールの代替用途 JSP「グリーンブロック」
URL http://www.co-jsp.co.jp/

JSPは、生分解性発泡シートに続き、1999年、生分解性発泡体「グリーンブロック」を開発。グリーンブロックは、生分解性樹脂として評価の高い脂肪族ポリエステル樹脂を原料とし、高機能を保持したまま、60倍以上という高倍率化に成功した。高発泡による樹脂量の大幅な削減は、実用的な価格維持を可能にした。
 ブロック形状の型内成形発泡体は他社にない特徴であり、海外向け緩衝材、高機能製品の輸送保護包装材などに使用されている。分解速度は湖水や川で約3カ月、土壌中で約4カ月、コンポスト中で約1カ月で分解し、最終的には完全分解し、炭酸ガスと水にかえる。省資源につながる発泡体のメリットに加え燃焼カロリーが低く、地球温暖化係数の小さな素材でもある。

◆引っ張り強度はポリエチレンの数倍 島津製作所「ラクティ」
URL http://www.shimadzu.co.jp/

乳酸菌がつくった乳酸から合成したのが、島津製作所の乳酸系生分解性プラスチック「ラクティ」。従来のプラスチックと同様の耐久性と透明性を持ちながら、土中に廃棄すれば微生物により分解し、自然界でリサイクルされる。
 ラクティの引っ張り強度はポリエチレンの数倍、弾性値を示すヤング率も硬質塩化ビニールと同等で、従来のプラスチックに比べてそん色はない。さらにPETボトルに使われているポリエチレンテレフタレートと同等の透明性があるので、フィルムとして各種用途に使える。光透過率は90%以上で、透明性も優れている。
 こうした特性があるラクティは一般の汎用樹脂の成形機でさまざまな形に加工ができるほか、繊維状、フィルム状、成形品など自在に加工し、ラップ、ボトル、容器、衣服など多くの用途に使える。

◆植物を原料にあらゆる形に成形 三井化学「レイシア」
URL http://www.mitsui-chem.co.jp/

 21世紀を間近に控えて循環型社会の構築が叫ばれている今日。三井化学は、化学の限りない可能性を追求し、地球環境との調和のなかで、材料・物質の革新と創出を通して、広く社会に貢献することを企業の基本的な考えとしており、環境問題、廃棄物処理の解決に寄与する材料として、生分解性プラスチック(ポリ乳酸「LACEA」)の研究開発に挑戦。
 LACEAはトウモロコシ、バレイショなどに含まれるでんぷんの発酵で得られた乳酸を原料としたポリ乳酸。LACEAは植物という再生可能資源(Renewable Resources)を原料とする新しい材料であり、従来の成形方法でもいろいろな形に容易に成形が可能。成形品は包装容器、農業土木資材やコンポスト袋等に利用され、使用後は微生物で分解され、炭酸ガスと水に戻るところが大きな特徴である。

◆異なる原料で幅広いニーズに対応 
 東セロ「パルグリーンLC・BO」

URL http://www.tohcello.co.jp/

 東セロは、エコロジー時代の要請にこたえるため、生分解性プラスチックを使用し、独自の高度な延伸技術により成形した二軸延伸フィルムを2種類開発した。ポリ乳酸を原料とした「パルグリーンLC」は、優れた透明性、強度、耐熱性、寸法安定性を有し、さらに厚生省告示370号の溶出試験にも適合したきわめて安全性の高いフィルム。一方、「パルグリーンBO」は、LCと物性はよく似ているが、原料として変性ポリエステルを使用。
 東セロは、2つの異なる原料の生分解性フィルムを持つことで、原料事情や用途に細かく応じることができ、幅広い市場ニーズに対応できる強みを持つ。
 現在、電気製品のオーバーラップ、文房具・雑貨包装用のテープ付き包装袋、封筒、紙ラミネートによる化粧箱やトレー・容器、生鮮野菜包装、粘着テープなどの用途が広がりつつある。

◆植木ポット廃棄の悩みを解消 ユニチカ「テラマック」
URL http://www.unitika.co.jp/

 従来のプラスチックフィルムの特性を持ちながら、自然環境下で最終的に炭酸ガスと水に分解するのがユニチカの自然循環型ポリ乳酸繊維「テラマック」。原料は植物だが、強じんで防カビ性に優れ、かりに焼却しても有毒ガスは発生しない。
 環境調和型材料なのでハウスシート、テープなどの農業水産用資材や野外レジャー材料に使えば、使用後もそのまま分解、消滅する。これまでの植栽では仮植用ポットで育てた場合、定植時にポットをはぎとる作業とポットの廃棄が悩みだったが、テラマック植木ポットはそうした悩みを解消した。ハウス栽培でもテラマックロープは植物とともにコンポストへ投入できるため、ロープをはぎとる作業がなくなった。
 加工性に優れているため、窓張り用フィルム、荷物こん包緩衝材、各種紙製品との複合化にも向いているほか、生鮮食品の包装、水切り袋などコンポスト化可能材料としても人気がある。

◆農業資材や各種包装材料などに 
 昭和高分子「ビオノーレ」

URL http://www.shp.co.jp/

 昭和高分子は、高分子技術を通して環境問題への取り組みを続けている。生分解性プラスチック「ビオノーレ」は、汎用タイプの特性を持つプラスチックに生分解性を付与することにより、環境調和性を高める事を目的に開発した。ビオノーレは、プラスチックとしての優れた特性と自然環境下で分解・消滅する生分解性とを、原料の組み合わせを選ぶことにより両立させた。
 ビオノーレ製品は、マルチフィルムやポットのような、自然環境下で使用され回収・リサイクルが困難かつ不経済な農業資材、フィルムや発泡体をベースとした各種包装材料、生ごみ回収用のごみ袋、環境負荷の低減を意図した多岐にわたる生活雑貨などに用途を伸ばしつつある。

back to top


このホームページに対するご意見・ご感想はadnet@nikkei.co.jpまでお願いします。
掲載の文章・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権は日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。
Copyright 1999 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved